海洋資源の保全と持続可能な利用を目的とした資金調達手法として、「ブルーファイナンス」と「ブルーボンド」への関心が国内外で高まっています。
まだまだこれらの関係やグリーンボンドとの正確な違いなどは広まっていない印象もあり、今回は「ブルーファイナンス」と「ブルーボンド」について、その定義や関係、国際的な原則・ガイドラインの全体像を改めて整理していきたいと思います。

ブルーファイナンスとは
ブルーファイナンスとは、持続可能な海洋経済(ブルーエコノミー)の実現に貢献する資金調達全般を指す概念を指します。
【ブルーエコノミー】海を守りながら、海洋資源を持続可能に活用して経済成長も目指す考え方で、漁業・養殖・海運・海洋観光・再生可能エネルギーなどが主な対象。
このブルーファイナンスは、国際的に統一された定義はまだ存在しませんが、格付投資情報センター(JCR)は、「持続可能な経済成長や海洋関係者の生活向上・雇用創出、海洋生物を含む海洋生態系の保全に貢献するファイナンスであり、国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則(GBP)やローン・マーケット・アソシエーション(LMA)のグリーンローン原則(GLP)が定める4つの核となる要素を遵守するもの」という考え方を示しています。
国際金融公社(IFC)は2022年に「ブルーファイナンスガイドライン(BFG)」を策定し、海洋関連に加えて上下水道など淡水関連のプロジェクトも対象に含めています。
また、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が「持続可能なブルーエコノミーファイナンス原則」を、国連グローバル・コンパクト(UNGC)が「持続可能な海洋原則」を公表するなど、複数の国際機関がそれぞれの立場からガイダンスを出しています。
このように、ブルーファイナンスは、融資(ブルーローン)や債券(ブルーボンド)など、複数の金融手法を含む上位概念といえるでしょう。

ブルーボンドとは|グリーンボンドとの違い
ブルーボンドは、ブルーファイナンスの中でも債券という形式をとる資金調達手法であり、グリーンボンドの一種として位置づけられています。
ICMAのグリーンボンド原則では、ブルーボンドを「海洋資源の持続可能な利用の重要性を強調し、関連する持続可能な経済活動の促進を目的とする債券」と説明。
つまりブルーボンドとは、グリーンボンドという大きな枠組みの中で、資金使途を海洋・水関連分野に絞り込んだものとすると理解しやすいでしょう。
ここで両者の違いを整理すると、以下の表のようになります。
| 項目 | グリーンボンド | ブルーボンド |
| 準拠する主な原則 | ICMAグリーンボンド原則(GBP) | GBPに加え、ICMA等の実務者ガイドやIFCブルーファイナンスガイドライン |
| 資金使途の範囲 | 再生可能エネルギー、省エネ、汚染防止など幅広い環境分野 | 海洋保全、持続可能な水産業、海洋汚染防止など海洋・水関連分野に限定 |
| 市場規模 | 世界で発行額が大きく拡大 | グリーンボンドに比べるとまだ小規模 |
| 代表的な発行体 | 事業会社、金融機関、政府等が幅広く発行 | セーシェル共和国、北欧投資銀行、国内では食品・水関連企業や自治体など |
グリーンボンドは対象分野が幅広い分、投資家に対して「何を目的とした資金調達か」というメッセージがやや伝わりにくいという側面があります。
一方、海洋・水資源というテーマに資金使途を絞り込むブルーボンドは、発行体の戦略と資金使途の結びつきを明確に示せる点が特徴です。

国際的な原則・ガイドライン
ブルーボンドに関するガイドラインは複数の国際機関が出していましたが、2023年に主要機関による統一的な実務者ガイドを共同で公表されています。それらを挙げてみましょう。
ICMA「Bonds to Finance the Sustainable Blue Economy」
2023年9月、ICMA、IFC、国連グローバル・コンパクト、UNEP FI、アジア開発銀行(ADB)の5機関は、共同で「持続可能なブルーエコノミーの資金調達のための債券に関する実務者ガイド」を公表しました。
この実務者ガイドは、ブルーボンドをグリーンボンドの一部として位置づけたうえで、適格なブループロジェクトの分類や発行プロセスを整理したものとなります。
それまで複数存在していたガイドラインの考え方を集約し、市場関係者が参考にできる共通の基準を示した点に、とても意義のあるガイドラインとされています。
IFC「Guidelines for Blue Finance」
IFCは2022年1月に「ブルーファイナンスガイドライン」の初版を策定し、2025年9月には改訂版を公表。グリーンボンド原則(GBP)・グリーンローン原則(GLP)との適合を前提としたうえで、対象事業がブルー適格と判断されるための確認プロセスが示されています。
さらに、海洋関連のプロジェクトに加え、上下水道など淡水に関わる課題解決も対象に含めている点が特徴です。
①GBPまたはGLPへの適合と、水や海洋に関する国際目標への貢献の確認。
②対象事業が他の環境・社会分野に著しいリスクを及ぼさないことの確認。
③準拠すべきサステナビリティ基準の明確化。
このような3ステップでブルー適格性を判断する枠組みを示し、実務でチェックしやすい構成になっています。

適格プロジェクトの分類
次に、どのようなプロジェクトがブルーボンドの資金使途として認められているのか、実務者ガイドが示す代表的な分類を確認してみましょう。
ICMA等の実務者ガイドでは、8つの適格ブループロジェクトカテゴリーが例示されており、海洋生態系の保全や持続可能な水産業、海洋汚染の防止といった分野が対象に含まれるとされています。
こうしたプロジェクトの適格性を判断する前提として、対象事業の環境改善効果を裏付ける現況データの取得は欠かせません。
例えば藻場や港湾構造物を対象とする海洋インフラ整備プロジェクトでは、水中ドローンによる継続的な状態把握が、資金使途の妥当性を示す材料の一つになります。
なお実務者ガイドは、
①調達資金の使途。
②プロジェクトの評価と選定のプロセス。
③調達資金の管理。
④レポーティング。
というICMAグリーンボンド原則と共通する4つの核となる要素への適合を求めています。
また、発行後は年1回程度、資金の充当状況と期待される環境改善効果について開示することが基本的な考え方となっており、発行プロセスの詳細や、レポーティングを支える第三者評価(セカンドパーティオピニオン)の役割がとても重要なものとなっています。

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ブルーボンドの適格プロジェクトとして海洋インフラ整備や生態系保全事業を検討する際は、その環境改善効果を客観的に示すデータの有無が、フレームワーク策定やセカンドパーティオピニオン取得の土台になるでしょう。
当社は、こうした基礎データの整備を以下のような形で支援しています。
①水中ROV・UAVによる港湾構造物(桟橋・護岸等)の現況調査・定点モニタリング。
②藻場など海洋生態系の分布・状態調査による、生態系保全プロジェクトの基礎データ取得。
③潜水士による近接目視点検とROV調査を組み合わせた、多角的な現況把握。
④取得データのBIM/CIM化による、投資家向け説明資料や社内検討資料への活用支援。
プロジェクトの適格性を検討する初期段階からご相談いただくことで、資金使途の説明に必要なデータ整備を効率的に進めることができます。
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参考文献
・IFC「Guidelines for Blue Finance」[初版2022年1月、改訂版2025年9月]
・国際資本市場協会(ICMA)「グリーンボンド原則」日本語訳
・環境省「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン」[2024年版、付属書のグリーンリストは2026年4月改訂]
・日本格付研究所(JCR)ブルーファイナンス評価関連資料