現場で働く私たちの安全対策のリアル!潜水士免許・ライフジャケット・熱中症対策まで!

Port terminal with tall orange gantry cranes along a pier, blue sea to the left and stacked shipping containers in the foreground and background.

当社SeaChallengeが日々点検している港湾・橋梁・護岸などの現場は、作業のフィールドが「陸上」ではなく「水上」や「水中」となります。

一般的な建設現場や工場での安全対策としては、転倒・墜落・機械への巻き込まれなどが中心となりますが、水辺や水中での作業は、溺水・減圧症・視界不良・低体温症といった環境特有のリスクにも備えなければなりません。

しかも相手は波や潮流、天候の変化という人知を越えた自然現象。
つまり海洋点検という仕事は技術力だけでなく、法令に基づいた安全管理の仕組みがあってはじめて成立する仕事だと言えるのです。

潜水士免許、船舶からの転落防止、悪天候時の作業中止、そして近年義務化された熱中症対策は、いずれも「海と構造物の現場で人を守る」ための対策です。

今回は、SeaChallengeのような点検会社が現場で向き合っている安全対策のリアルを、法制度の観点から整理します。

Two construction workers in hard hats and orange safety vests sit in a small boat inside a dark tunnel, with one operator using a vertical measuring staff against the ceiling to take measurements.

水中点検の中心となる潜水業務には、厚生労働省が定める「高気圧作業安全衛生規則」が適用されます。

この規則により、潜水業務に従事できるのは国家資格である潜水士免許を取得した者に限られており、無資格者はもろちん潜水業務に就くことはできません。

また、水深10m以上での潜水業務については、送気する気体の成分組成や、加圧を開始してから減圧を終えるまでの時間、業務における最高圧力などを定めた「作業計画」をあらかじめ作成し、それを関係する労働者に周知した上で、計画どおりに実行することが事業者に義務付けられています。

さらに高圧環境下での作業後14時間以内は、身体に負担のかかる重激な業務に就かせてはならないという規定もあり、減圧症・窒素酔い・酸素中毒といった健康障害を未然に防ぐ仕組みが細かく設けられています。

潜水業務はただ「潜れば良い」仕事ではなく、こうした計画性と記録の積み重ねの上に成り立っているのです。

船上での作業や移動においては、転落・溺水対策が欠かせません。

国土交通省は2018年2月から、プレジャーボートや漁船など小型船舶に乗船するすべての人に対し、原則としてライフジャケットの着用を義務化しました。
着用させなかった船長には違反点数が科され、点数が累積すると免許停止処分の対象になります。

国土交通省によると、小型船舶からの転落事故では毎年約80人が命を落としており、ライフジャケットを着用していた場合の生存率は、着用していない場合のおよそ2倍に高まるとされています。

SeaChallengeのように作業船を使って現場に向かう点検会社では、この着用義務は特別な対策ではなく、乗船するたびに確認する日常的な管理です。

労働安全衛生規則第522条では、高さ2m以上の箇所で作業を行う場合、強風・大雨・大雪などの悪天候により危険が予想されるときは、労働者を作業に従事させてはならないと定められています。

厚生労働省の通達では、強風の目安を「10分間の平均風速が毎秒10m以上」、大雨を「1回の降雨量が50mm以上」としており、この基準を超えた場合、現場は速やかに作業を中止しなければなりません。
そして海の上では風速に加え、波高やうねり、潮流の状況も判断材料になります。

海上保安庁は「海の安全情報」として、全国の灯台などで観測した風向・風速・波高といった局地的な気象・海象データをリアルタイムで公開しており、現場責任者はこうした情報も踏まえて、その日の作業実施の可否を慎重に判断しなければなりません。
「無理をして予定どおり終わらせる」のではなく、「条件がそろわなければ中止する」という判断をすることは、海の現場における安全管理の1つなのです。

Looking up through tall green trees at a bright, leafy canopy from the forest floor.

近年、現場の安全対策として急速に重みを増しているのが熱中症対策です。

2025年6月には改正労働安全衛生規則が施行され、暑熱環境で作業を行う事業者に対して熱中症予防措置の実施が罰則付きで義務化されました。
対象となるのは、WBGT値(暑さ指数)が28度以上、または気温31度以上の環境で1時間以上連続、あるいは1日4時間以上作業が行われる現場となります。

事業者には、熱中症の疑いがある作業者を早期に発見し報告する体制の整備や、症状が重くなる前の応急処置・搬送手順の準備、それらを作業者全員に周知することが求められ、違反した場合は罰則の対象となってしまいます。

総務省消防庁の確定値によると、2025年5月から9月までの熱中症による救急搬送人員は全国で累計100,510人にのぼり、統計を開始した2008年以降で最も多い水準となりました。

炎天下の護岸や、風の抜けにくい水上での作業は、想像以上に体温が上昇しやすい環境です。
現場ではこうした法改正への対応が重要なテーマとなっています。

港湾調査の現場は、日陰の少ない屋外での長時間作業に加え、コンクリート路面からの輻射熱、そしてウェットスーツやドライスーツの着用による体温上昇が重なり、熱中症のリスクが高い環境です。

当社SeaChallengeでは、各現場の責任者がWBGT計(暑さ指数計)を携帯して数値を常に把握し、ウェット・ドライスーツに着替える前には潜水者と陸上作業者の間で体調を確認し合い、少しでも不安があれば作業を中止する運用を徹底し、マニュアル化しています。

さらに、どの現場でもすぐに移動・休養できる場所を確保したうえで水分・塩分補給と長めの休息をとり、屋外で作業する潜水士だけでなく屋内スタッフにも冷房・水・氷・塩分補給食品・冷却シートなどを常備するなど、屋外・屋内を問わない体制を徹底しています。

安全対策は、免許や規則を整えるだけでは完結しません。

労働安全衛生法では、労働者を新たに雇い入れたときや作業内容を変更したときに、事業者が安全衛生教育を行うことが義務付けられています。

また、高気圧作業安全衛生規則第11条においても、送気用の空気圧縮機を運転する業務や、再圧室を操作する業務など特定の業務に労働者を就かせる場合には、あらかじめ特別の教育を行うことが義務付けられており、免許取得後も現場ごとに必要な教育が前提とされています。

さらに、水中・海上作業では作業前に危険性をあらかじめ洗い出しておくことが重要になります。
当日の海象・気象条件、機材の状態、作業員の体調などを事前に確認し、「今日はどこにリスクがあるか」を関係者間で共有してから作業に入る…こうした地道な準備の積み重ねが、免許や法令という制度を、実際に事故を防ぐ力に変えているのです。

Dramatic seascape: dark clouds above a choppy ocean with sunbeams breaking through to the horizon

なぜ現場の安全対策がここまで制度化されているのか、労働災害の統計を見るとその背景が見えてきます。

項目数字出典
全産業の労働災害死亡者数(令和6年確定値)746人(前年比9人減、過去最少)厚生労働省
業種別死亡者数トップ(令和6年)建設業232人(全体の31.1%)厚生労働省
小型船舶からの海中転落による年間死者数約80人国土交通省
ライフジャケット着用時の生存率非着用時の約2倍国土交通省
悪天候時の作業禁止基準となる強風の目安10分間平均風速10m/s以上労働安全衛生規則第522条関連通達

死亡者数は減少傾向にあるとはいえ、建設業をはじめとする屋外・水辺の作業現場は依然として最も死亡者数の多い業種の1つとなっています。
そして私たちはこうした現実を踏まえ、現場での対策を丁寧に積み重ねなければならないのです。

Underwater scene with a scuba diver swimming to the right of a circular SeaChallenge logo featuring a rainbow heart between green leaves.

当社SeaChallengeでは、ROV(水中ロボット)やUAV(ドローン)を導入し、日々の調査・点検に活用しています。

これは単なる効率化だけでなく、人が直接潜ることが難しい深度や、危険度の高い箇所への立ち入りそのものを減らすという、安全対策としての意味も持っています。

このように人が入れない場所に最新機器を用いて調査することができれば、それだけ潜水や高所作業の回数と時間を減らせるからです。

もちろん、機器の設置や船上での作業、潜水士による直接確認が必要な場面は多くあります。
ROVやUAVを操作するにも、船を安全に運航し、機材を海に投入・揚収する作業員が必要であり、技術が人の作業をゼロにするわけではありません。

だからこそ、潜水士免許制度や小型船舶に関する法令、悪天候時の作業中止基準、熱中症対策といった法令を土台にしながら、技術による代替と、人による確認を組み合わせた「ハイブリットな方法」が、これからの点検会社に求められていると考えています。

Scuba diver in a black wetsuit using a tape measure to record the dimensions of a vertical concrete pillar underwater

港や橋、ダムを支える点検という仕事は、目に見える構造物の健全性だけでなく、それを支える人の安全があってはじめて成り立つものです。

潜水士免許、ライフジャケットの着用義務、悪天候時の作業中止基準、そして熱中症対策…。
これらはどれも、過去の事故や労働災害の教訓から生まれた制度です。

当社SeaChallengeは、こうした法令を守ることを大前提としながら、ROVやUAVといった最新技術を組み合わせることで、現場で働く人の安全と、社会インフラの安全の両方を守っていきます。

・厚生労働省「高気圧作業安全衛生規則」

・国土交通省「海事:ライフジャケットの着用義務拡大」

・労働安全衛生規則第522条(悪天候時の作業禁止)関連通達(富山労働局)

・厚生労働省「熱中症対策」特設サイト(労働安全衛生規則改正の周知)

・厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表」

・海上保安庁「海の安全情報(沿岸域情報提供システム)」

・総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」(確定値)




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宮崎健
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