犠牲陽極の寿命はどう測る?水中の陽極消耗量調査の解説

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陽極消耗量調査とは

港湾の鋼構造物を守る犠牲陽極は、身代わりに溶けて痩せていく消耗品。潜水士が水中で寸法を測り、消耗率から残りの寿命を推定する「陽極消耗量調査」の具体的な流れを、人間の健康診断にたとえてやさしく解説します!

みなさんは、健康診断を受けたことがあるでしょうか?

体重を測り、去年の数値と比べて「このままのペースだと少し心配」と告げられる——あの健康診断の流れ。実は、海の中の金属にも同じような健康診断があるのです。

 

前回のコラムでは、犠牲陽極(ぎせいようきょく)という金属の塊が、鋼材の身代わりに溶けることで港湾の構造物をサビから守る仕組みを解説した。今回はその続きのお話。身代わりに溶けていくということは、犠牲陽極はいつか必ずなくなってしまう消耗品だということ。では現場では、「あとどれくらい持つのか」をどう調べているのか。それが今回のテーマ、陽極消耗量の調査方法です。

鋼管杭に取り付けられた犠牲陽極

犠牲陽極を例えるなら「ロウソク」。水中で減り、無くなる前に気づけるか?

 

犠牲陽極はロウソクによく似ている。火を灯している間、少しずつ短くなる代わりに部屋を照らし続ける。犠牲陽極も同じで、自分が少しずつ溶けて痩せていく代わりに、鋼材を守り続けている。

 

問題は、ロウソクが燃え尽きたあと。すっかり溶けてなくなれば、守られていた鋼材はむき出しになり、サビ(腐食)が一気に進んでしまう。しかも犠牲陽極があるのは海中。陸上からは、痩せ具合を見ることができません。

 

だからこそ、燃え尽きる前に「残りの長さ」を測りに行く必要がある。その役目を担うのが、私たち潜水士です。

潜水士はこうして測る——調査の3ステップ

陽極消耗量調査の考え方は、健康診断とそっくり。大きく3つのステップで進む。

 

ステップ1:水中で「今の姿」を測る

潜水士が海に潜り、犠牲陽極の長さ・幅・厚みといった寸法をひとつずつ測っていく。あわせて水中カメラで写真を撮り、表面の状態や痩せ方のクセ(片側だけ多く溶けていないか等)も記録する。現場によっては、防食がきちんと効いているかを示す「電位(でんい)」の測定を組み合わせることも。これは人間の健康診断でいえば、身長・体重測定や写真撮影にあたる手順となる。

水中で陽極の寸法を測定する潜水士

ステップ2:「元の姿」と比べて消耗率を出す

犠牲陽極には、取り付けたときの寸法、つまり「新品時(設置時)の初期データ」が残っている。今回測った寸法をこれと比べれば、「元の大きさに対して、どれくらい減ったか」=消耗率が計算できる。たとえば新品時とくらべて半分近く痩せていれば、身代わりの仕事をしっかり果たしてきた証拠である。

消耗して痩せた陽極(新品時との比較イメージ)

ステップ3:ペースから「残りの寿命」を推定する

取り付けてからの年数と消耗率が分かれば、「1年あたりどれくらいのペースで痩せているか」が見えてくる。そのペースが今後も続くと仮定すれば、「あと何年くらい持ちそうか」という残存寿命の目安を推定できる。体重の変化のペースから将来を予測して、「そろそろ生活を見直そう」とアドバイスするのと同じ考え方となる。

「なくなってから」では遅い——計画的な交換のために

この調査の本当の価値は、交換時期を前もって計画できる点にある。

 

犠牲陽極が完全になくなってから慌てて工事をするのでは、その間、鋼材は無防備な状態。一方、調査によって「あと数年で寿命を迎えそうだ」と分かっていれば、予算や工事の段取りを余裕をもって組み、防食が途切れる前にバトンタッチできる。構造物を長持ちさせるコツは、劣化してから直す「事後対応」ではなく、先回りして手を打つ「予防保全」。陽極消耗量調査は、まさにその第一歩と言える。

調査結果をまとめた報告書のイメージ

海中で黙々と身代わりを務める犠牲陽極。その健気な働き者に定期的な健康診断を受けさせてあげることが、港や桟橋を何十年も使い続けるための、いちばん確実な近道と言える。

次回予告:守られている鋼材そのものの健康状態は、どう調べるのか? 次回は「鋼矢板・鋼管杭の肉厚測定とは」をお届けする予定。お楽しみに。

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依田和明
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