ブルーエコノミーとは【前編】

海洋経済、ブルーエコノミーの定義と主要セクター

地球表面の約7割を占める海は、気候変動への対策や産業振興において重要な鍵を握っています。その中で注目を集めているのが「ブルーエコノミー」と呼ばれる持続可能な海洋経済の考え方です。直感的には「グリーンエコノミーの海洋版」と捉えると理解しやすいでしょう。本記事(前編)では、ブルーエコノミーの国際的な定義や対象となる主要セクターについてわかりやすく解説します。

ブルーエコノミーとは|OECDによる定義

ブルーエコノミーとは|OECDによる定義

OECD(経済協力開発機構)が提唱するブルーエコノミーの基本概念について、その背景とともに確認していきましょう。

OECDでは海洋資源を無計画に消費する従来の成長モデルから脱却し、環境保全と経済成長を両立させる概念としてブルーエコノミーを定着させつつあります。

具体的には、海洋環境の健全性を損なうことなく、持続的な雇用創出や価値創造を実現する経済活動全体を指します。従来の海洋経済(Ocean Economy)が経済規模や収益性を重視していたのに対し、ブルーエコノミーはサステナビリティ(持続可能性)を中心軸に据えている点が特徴です。環境負荷を減らしつつ海洋資源を活用する姿勢が強く求められています。

世界銀行・EUの定義との違い

ブルーエコノミーは国際機関によって重視する視点が若干異なります。ここでは世界銀行やEU(欧州連合)の定義との違いを整理します。

機関重視する視点具体的なアプローチ
OECD海洋環境の保全と持続可能な経済成長の両立従来の成長モデルからの脱却。環境負荷を抑えつつ海洋資源を活用し、持続的な雇用創出・価値創造を実現
世界銀行沿岸部の生活向上、雇用創出、貧困削減と食料保障沿岸地域・発展途上国に重点。持続可能な海洋利用を通じた貧困削減と食料安全保障の支援
EU(欧州連合)海洋産業全体の脱炭素化・循環型経済への移行海洋関連の全経済活動とその環境的持続性を包括。先進的な環境規制・再エネ目標と連動
Three-panel infographic showing sustainable ocean economic growth: OECD panel with wind turbines and reefs; World Bank panel with coastal livelihoods and fishing; EU panel with offshore wind, shipping, and recycling facility.

世界銀行では、「沿岸地域や発展途上国の生活向上・雇用創出」に重点が置かれています。持続可能な海洋利用を通じて貧困削減や食料安全保障を支援するアプローチが特徴です。

一方、EUの定義では「海洋に関連するすべての経済活動とその環境的持続性」が幅広く包括されています。EUは先進的な環境規制や再エネ目標を掲げており、海洋脱炭素化や循環型経済への移行手段としてブルーエコノミーを位置づけています。

対象となる産業セクター一覧

ブルーエコノミーがカバーする産業範囲は多岐にわたります。伝統的な海洋産業から先進技術を活用した新興セクターまで分類してご紹介します。

伝統的セクター(漁業、海運、観光等)

伝統的セクターには、古くから存在する海洋産業が含まれます。代表例として、漁業・水産養殖業、海運・港湾物流、海洋観光(沿岸リゾート等)が挙げられます。

これらの分野では、持続不可能な過剰捕獲の防止や過剰利用による環境破壊を防ぐ取り組みが進められています。たとえば海運分野では、船舶燃料の脱炭素化や省エネ型船舶の導入など、環境負荷を低減する変革が進行しています。

新興セクター(洋上風力、海洋バイオ等)

新興セクターには、技術革新によって急速に成長している分野が含まれます。代表的な分野として、洋上風力発電、海洋バイオテクノロジー、海水淡水化、海底資源開発があげられます。

特に洋上風力発電は、脱炭素社会の実現に向けた主力電源として世界中で市場が急拡大しています。海洋バイオテクノロジー分野では、藻類を利用したバイオ燃料や医薬品素材の開発に期待が寄せられています。

Collage showing Japan's blue-economy sectors: fishing, offshore wind, shipping/logistics, marine biotech, coastal tourism, and sea-resource development with central circular arrows.

【まとめ】

・ブルーエコノミーとは、「グリーンエコノミーの海洋版」であり海洋保全と経済成長を両立させる概念です。

・OECDや世界銀行、EUなど、機関ごとに地域や目的に合わせた定義や焦点を当てている領域に違いが存在します。

・対象産業には、漁業や海運などの「伝統的セクター」と、洋上風力や海洋バイオなどの「新興セクター」があります。

・海洋資源を持続可能に活用することは、将来的なビジネスの競争力維持にも直接つながります。

続く後編記事では、世界のブルーエコノミー市場規模や、日本の海洋基本計画をはじめとする政策動向、ブルーファイナンスについて詳しく解説します。

 

 【次回予告】 「海を守る」が、2030年に3兆ドル(約400兆円以上)の巨大市場に?

後編では、急拡大するブルーエコノミーの「市場規模」と、いま世界で注目される新たな資金調達手法「ブルーファイナンス」の最新動向を解説します。 四方を海に囲まれた日本で、これからどのようなビジネスチャンスが生まれるのか? 企業が知っておくべき政策動向とともにお届けします。

「ブルーエコノミーとは」後編
海洋経済、ブルーエコノミー市場規模と日本の政策動向

参考文献

・OECD「The Ocean Economy in 2030」

https://www.oecd.org/en/publications/the-ocean-economy-in-2030_9789264251724-en.html

・World Bank「What is the Blue Economy?」

・European Commission「Blue Economy Report」

・内閣府「海洋基本計画」 https://www8.cao.go.jp/ocean/policies/plan/plan.html

・UN Decade of Ocean Science for Sustainable Development https://oceandecade.org/

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依田和明
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