― なぜドローンは、魚に“逃げられにくい”のか ―
水中ドローンというと、
「機械音が大きくて生物を驚かせてしまうのでは?」
「魚はすぐ逃げてしまうのでは?」
といったイメージを持たれることが少なくありません。
しかし、実際に現場で水中ドローンを運用していると、
その印象とは逆の光景に出会うことが多々あります。
潜水士と水中ドローンの決定的な違い
従来、水中生物の観察や港湾・沿岸域の調査は、潜水士による目視調査が中心でした。
しかし、人が水中に入る場合、
泡の発生
フィンの動き
人影そのもの
といった要素が、生物にとっては非常に大きな刺激になります。
一方、水中ドローンはどうでしょうか。
泡を出さない
動きが一定で予測しやすい
人型ではない
こうした特徴により、生物からすると「危険な存在」と認識されにくいのです。
実際の現場で起きていること
実際の調査現場では、
魚がドローンの周囲を回遊する
岩礁に付いた生物がそのままの状態で映像に収まる
潜水調査では確認しづらかった生態行動が撮影できる
といったケースが珍しくありません。
特に、港湾や岩礁域に生息する魚類や底生生物は、
「一定距離を保って動かない物体」には慣れている傾向があります。
水中ドローンのゆっくりとした動きは、
波で揺れる漂流物や岩陰の影と近い存在として受け取られている可能性があります。
生物にとっての「音」の話
水中ドローンはモーター音を発しますが、
水中では音の伝わり方が空気中とは異なります。
重要なのは、
突発的な大音量ではないこと
周期的で一定の音であること
です。
生物は「不規則で急激な刺激」に対して強く警戒しますが、
一定で連続的な音は、比較的早く環境音として受け入れられると考えられています。
その結果、
ドローンを「追い払う対象」として認識しない状況が生まれます。
映像取得に向いている理由
この「敵視されにくさ」は、調査や記録において大きなメリットになります。
人の介入による行動変化が少ない
より自然に近い生息状況を記録できる
同じ条件で繰り返し観察できる
つまり、水中ドローンは
生物を驚かせずに“そっと覗く”ための道具として非常に優秀なのです。
港湾・沿岸調査における価値
港湾や沿岸域は、人為的な構造物と自然環境が混在する場所です。
そのため、生物の分布や行動を正確に把握することは、
環境調査
藻場・生態系評価
維持管理計画
といった分野で重要な意味を持ちます。
水中ドローンを使うことで、
「調査していること自体が環境を変えてしまう」リスクを下げることができるのは、
見過ごされがちですが非常に大きな価値です。
水中ドローンは、単なる「潜水の代替手段」ではありません。
生物にとっては、
静かで
予測しやすく
過剰に刺激を与えない
存在であり、
結果として自然な姿を記録するのに向いた調査ツールになっています。
人が入らないからこそ見える世界。
水中ドローンは、
海の中の「ありのまま」を記録する、新しい目になりつつあります。