第3回:水中ドローン調査の手順と注意点 安全管理や機材選定のポイントを詳しく解説

水中ドローン(ROV)による調査・点検は、従来の潜水作業に比べて安全かつ効率的に行えるのが大きな魅力です。
しかし、「ただ機材を沈めればよい」というものではありません。正しい手順・安全管理・機材の選定があってこそ、現場での成果につながります。

今回は、実際の水中ドローン点検業務の流れと注意点、現場で必要な体制や技術的ポイントを具体的に解説します。

水中ドローン調査の基本的な手順とは?

水中ドローンによる点検調査は、以下のような流れで行います。

① 事前調査(現場情報の確認)

  • 対象施設の図面、過去の点検履歴の確認

  • 潮流、深度、水質、堆積物の有無など環境条件の把握

  • ドローンの進入可能性や障害物の有無を確認

② 作業計画の立案

  • 点検範囲、調査目的、撮影ポイントの設定(例:10m間隔の定点撮影)

  • ケーブル長や照明の有無、操縦体制を明記

  • 安全対策・作業員配置・緊急対応の明文化

③ 機材の準備とテスト

  • 水中ドローン本体、操作端末、ケーブル、電源、記録媒体などを準備

  • センサー・カメラの動作確認、SDカードや録画設定の確認

  • 予備機材・予備バッテリーの用意も推奨

④ 現地作業・ドローン投入

  • 「作業中」であることを示す標識・のぼり等で周囲への周知

  • 操縦士と補助者による2名以上体制(操縦+監視)

  • 水中ドローンをゆっくりと投入し、対象施設の撮影・調査

  • 必要箇所で定点静止・パン・チルト撮影を実施

⑤ データの保存と報告書作成

  • 映像の抜け・途切れがないかをその場で確認

  • 必要に応じて画像を静止画として抽出・加工

  • 緊急度判定や図面との照合を行い、成果物として報告書に反映

安全管理のポイント:見えないリスクにどう備えるか

水中ドローンは安全性が高いとはいえ、以下のような作業リスクには十分な注意が必要です。

  • ケーブルの引っ掛かり・絡まりによる操作不能

  • 堆積物の巻き上げによる視界不良化

  • 流速の速いエリアでの機体流出・転倒

  • ドローンが自力で回収できない場所へ入り込む可能性

これらに備えて、以下の安全対策が重要です:

  • 潜水士によるバックアップ体制の確保(回収困難時に対応)

  • 作業前の酸素濃度・有毒ガスチェック(下水施設等)

  • ケーブルマネジメント(目視・補助者管理)

  • ドローンの進入方向を岸・陸側に限定する運用ルール

機材選定のポイント:現場に適したROVを使う

水中ドローンは多種多様で、機種の選定を誤ると作業効率が大きく下がることもあります。
選定時には以下の点をチェックしましょう:

チェック項目選定の基準例
深度対応調査水深+10〜20mの余裕があるか
カメラ性能4K or フルHD、低照度対応があるか
ライト光量調整ができるLED搭載か
サイズ・機動性狭い場所に入れる大きさか
ケーブル長調査範囲に十分か(最大長確認)
操作性スマートフォン・タブレット・PC等の操作系統
オプションレーザー測距、スケーラー、ロボットアームなど

現場環境や目的に合った機材を選ぶことが、調査成功の鍵になります。

操縦士の役割とは?

水中ドローンの操縦士には、以下のようなスキルと判断力が求められます:

  • 安定した操縦技術(映像がブレないように保持)

  • 周辺状況の観察と安全判断

  • 映像・位置・角度の把握と記録

  • トラブル時の初期対応(ケーブル戻し、回収指示)

  • 必要に応じて「どこまで進入するか」「どこで引き返すか」の判断

単に操作するだけでなく、点検の視点を持った撮影者であることが重要です。

まとめ:調査の成否は「準備」で決まる

水中ドローンは非常に優れた点検ツールですが、
安全な作業体制・事前の情報収集・適切な機材選定なしでは、現場で力を発揮できません。

調査成功のポイントは、「潜らなくてよくなったからこそ、見落とさずに、正確に記録すること」。

次回の第4回では、調査で得られたデータを3Dモデル化・BIM/CIMと連携してどう活かせるかを解説します。

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