水中ドローンは“インフラの目”になる時代へ
近年、水中ドローン(ROV)はインフラ点検の現場で急速に導入が進んでいます。
港湾、ダム、下水道といった公共施設の調査・点検において、人の代わりに水中へ入り、安全かつ効率的に状況を「見える化」できることが最大の魅力です。
今回は、実際に水中ドローンが使われている3つの現場(港湾・ダム・下水管)での活用事例と、そのメリットを紹介します。
港湾施設での活用:見えない水際を可視化

港湾では、岸壁や防波堤、護岸などの水中部が常に潮流や波にさらされており、劣化が進行しやすい場所です。
従来は潜水士による調査が主流でしたが、近年は水中ドローンで以下のような点検が行われています:
ケーソン基礎や継ぎ目の劣化確認
鉄筋の露出やひび割れの撮影
洗掘やブロック転移の有無を調査
施工前・施工後の記録動画として活用
足場設置が不要で作業時間が短く、安全性も高いため、公共工事の履歴管理や報告用資料にも活用されています。
ダムでの活用:水圧に耐える巨大構造物の保全

ダムのような大規模構造物では、放水口・取水設備・堤体基礎部など、水中にある重要構造の点検が欠かせません。
水中ドローンは次のような用途で活用されています:
放水口内部のカメラ調査(ひび割れ・異物)
ダム堤体下部の浸食・変形の有無を確認
魚道や導水路の詰まり・堆積状況の点検
地震・大雨後の緊急対応点検にも即応
災害時や取水制限時でも、安全かつ正確に現状を記録・判断できる手段として導入が進んでいます。
下水管・ボックスカルバートでの活用:危険な密閉空間を遠隔で

下水管やボックスカルバートの調査は、狭く、暗く、ガスが溜まりやすい環境での作業になるため、
作業者の安全確保が大きな課題です。
水中ドローンを使えば、以下のような調査が可能になります:
管口からの進入・10mごとの定点撮影
流入物や堆積物の可視化
異常箇所の記録(変形・陥没・クラック)
潜行目視調査の代替または補完として運用
フーカーホースが不要な調査範囲をドローンでカバーし、人的リスクを低減する役割を担っています。
調査結果は映像データとして“残せる財産”に
どの分野でも共通しているのは、水中ドローンによる調査は「記録として残せる」ことです。
高画質な映像や静止画
深度・角度・方向などのデータ
必要に応じて3Dモデル化やBIM/CIM連携も可能
これにより、経年劣化の比較や、修繕判断の裏付け資料としても強力な武器になります。
点検は“危険”から“データ活用”の時代へ
水中ドローンは単なる便利ツールではなく、
これまで「潜るしかなかった」調査を、“見る・比べる・活かす”に進化させる技術です。
港湾、ダム、下水管――
見えなかった場所の安全を、見えるカタチで記録する。
それが、これからのインフラ点検のスタンダードになりつつあります。
次回の第3回では、水中ドローン調査の流れ・作業体制・注意点など「実際の運用手順」について詳しく解説します。