水中ドローンとは?【基礎知識編】
水中ドローン(ROV:Remotely Operated Vehicle)は、水中を遠隔操作で移動しながら撮影や点検を行う無人機です。
近年では、港湾やダム、下水管、船舶、養殖場など多様な現場での調査・点検に活用される新しいツールとして注目を集めています。
“ドローン”というと空を飛ぶイメージがありますが、水中ドローンは「水中での目」として、
人が入りにくい・見えにくい場所の情報を、安全かつ効率的に取得することができます。
なぜ水中ドローンが調査・点検で選ばれているのか?
従来、水中の点検作業は潜水士によって行われてきました。
しかし、深さ・視界・潮流・低水温など過酷な環境では、人命リスクや高コスト、調査範囲の限界といった課題がありました。
そこで水中ドローンが注目された理由は、次のような点です:
安全性の向上:人が潜る必要がなくなる
作業時間の短縮:即時起動・リアルタイム映像確認が可能
コスト削減:足場や仮設設備が不要
記録性の高さ:映像・深度・角度などのデータを保存できる
狭隘部・危険区域への対応力:人が入れない場所でも自在に操作可能
水中ドローンの基本機能
点検や調査に使われる水中ドローンには、以下のような機能が搭載されています:
高解像度カメラ(4K/1080pなど)
⇒ ひび割れ・腐食・異物などを鮮明に確認可能LEDライト
⇒ 暗い水中でも対象物を明るく照らす深度・傾斜センサー
⇒ 現場の条件をリアルタイムで取得し記録ジャイロ・姿勢制御機能
⇒ 安定した撮影と正確な操作が可能ケーブル(テザー)通信 or 無線通信
⇒ 地上の操作端末と映像・指示をやりとり
一部の機種では、ロボットアームやレーザー測距装置などを搭載し、寸法測定やサンプル採取まで行うことも可能です。
どんな現場で活躍しているのか?
水中ドローンが実際に使用されている主な現場例はこちらです:
港湾施設の点検(岸壁・防波堤・護岸の水中部)
ダム堤体の調査(放水口・堆積状況・構造物の劣化)
下水道・ボックスカルバートの管内調査
橋脚・基礎杭の水中状況確認
船舶・係留施設のスクリューや船底の点検
災害時の被害調査(沈下・陥没・漂流物などの確認)
今後は“点検の常識”が変わるかもしれない
国土交通省や自治体でも水中ドローンの導入・試行が進んでおり、
安全・効率・データ性の観点から、今後の点検標準装備のひとつになる可能性が高まっています。
これからの時代、「潜って確認する」から「遠隔で見る・記録する」へ――
水中ドローンは、インフラ維持管理の在り方を大きく変える技術として注目されています。
次回の第2回では、実際にどんな調査・点検で使われているか?について、
港湾・ダム・下水道など現場別に具体例を紹介していきます。